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水上勉著 『ブンナよ、木からおりてこい』

2017/11/12

 

『ブンナ』は児童文学だと思われているかもしれませんが、私は大人にもぜひ読んで欲しい一冊だと思います。水上勉は生前「私の書いた本で後に残るものがあれば、飢餓海峡とブンナくらいだろう」と
言っていたそうです。

 

水上勉は、この本を書くことで、お母さんや子どもたちと一緒に、この世の平和や戦争のことを考えてみたかったそうです。そして「この世は生きとし生けるもの、すべて太陽の下にあって、平等に生きている。だが、この世は弱肉強食でもあるのだ。ブンナが木の上で体験した世にも恐ろしく、悲しく、
美しい事件のすべてが、子どもにいくらかの考えを与え、この世を生きていく上で、自分というものがどう確立されねばならないかを小さな魂に芽生えさせてくれることを信じる」と言っています。

 

実はブンナが登った、楽園にも思えた椎の木のてっぺんは、鳶がねぐらへ餌を運ぶ途中の貯蔵場所だったのです。そう言えば、『雁の寺』にも同じように椎の木のてっぺんに鳶が餌を貯めている描写がありました。

 

「他人のために尽くすことはよい。けれども、相手のことをよく見極めないといけない。相手によってはこちらの善意を受けておきながら、その善意を踏みにじったりするものがままいるものだ」人間の子どもの残酷さ、その子どもや強い生き物に痛めつけられる小動物たちの哀れさと共に、ブンナのお母さんがこう言った言葉も、きれいごとだけではない生きるためのしたたかさを教えているのです。

 

小さいお子さんがいるお母さんで、これから子どもたちに読み聞かせをしようと思ったなら、ぜひ
『ブンナ』を読んであげてください。読んでいるお母さん自身も、ブンナの世界に入り込んでしまうに違いありません。(H.S)