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アーサー・ビナードを読む 

2017年08月27日

アーサー・ビナード(Arthur Binard)は、1967年米国ミシガン州生まれの詩人。
大学卒業と同時に来日して、日本語での詩作や翻訳を始めました。
2001年に詩集『釣り上げては』が中原中也賞に選ばれたのを皮切りに受賞作多数。
現在は広島市在住で、テレビやラジオ出演の他、日本各地で講演会活動も精力的に行っています。

 

実は福井市でも7月に彼の講演会があったのですが、都合がつかず行けませんでした。
読書家だった亡き友が彼について話していたことも記憶にあり、彼の本を一度読みたいと思って
いましたが、最近になってようやく2冊のエッセイを読むことができました。

 

 

彼は「一番好きな日本語は?」とよく聞かれるそうなのですが、ありすぎて悩むそうです。
テレビ番組でも外国人にこの質問をしているのをよく見ますが、もし「一番好きな英語は?」と
聞かれても私もとっさには答えられないし、多分いっぱいあってどれにするか、かなり悩むでしょう。

 

また、彼が日本で目にする英語と、アメリカ人としての感覚のズレのエピソードが面白いです。
たとえば2008年のアメリカ大統領選で、わが福井県小浜市が当時のオバマ候補を応援していた時の
応援団ロゴマークに書かれていた FIGHT OBAMA。ところが、FIGHT OBAMA は日本語では通じるものの、英語では逆の意味の「打倒!オバマ」になってしまうのです。誰かが指摘したらしく、途中から
I LOVE OBAMA に書き換えられたそうですが、彼にとってはそれも何かくすぐったいようなズレが
あって、どっちもどっちの茶番大統領選に妙にマッチしていたとか。

 

ちなみに彼がアメリカに輸出したい日本語は「花吹雪」だそうです。
彼の故郷のミシガンでは、花びらが舞うような状態でも誰も「吹雪」にたとえることはなく、
きまって「綿」のようという表現にとどまるらしいのです。

 

英語の学習者や翻訳に携わっている人など、英語と日本語の言葉というものに日々向き合っている人には特におすすめしたいアーサー・ビナード。読んでみると色々な発見があるはずです。(H.S)

 


福井でのアーサー・ビナードの講演会を取り上げた記事
(2017年7月4日付 日刊県民福井より)
講演を聞いた知人は「期待以上の講演で、涙が出るほどうれしい話だった。あんなに本当のことを言うアメリカ人にはお目にかかったことがない」と話していました。話の内容も真珠湾攻撃から第五福竜丸事件にまで及んだそうで、目から鱗だったそうです。