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映画「Fukushima 50」鑑賞

2020年05月17日

映画


映画「Fukushima 50」公式サイトより

 

本来ならぜひ映画館で見たい作品でしたが、新型コロナウイルスで行きづらい状況が続き、とうとう映画館自体も休館となり、当分見られないと諦めていたところ、新作にもかかわらず配信で見られることになったので早速見ました。

 

この映画は今さら言うまでもなく、東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所事故現場での作業員たち約50名の必死の闘いを描いたものです。(原作: 門田隆将著 『死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発』)原発での想定外の非常事態、その描かれる状況が今の世界とも酷似していて、吉田所長の「慌てるな」「油断するな」「何でこんなことになっちまったんだ?俺たちは何か間違ったのか?」「生きて帰ろうな」という言葉どれもが重く響いてきました。もはや映画に描かれた原発事故が、今のパンデミックの序章に思えて仕方ありませんでした。

 

そしてつくづく感じたのは、最悪のもう一段階最悪の想定をしておくこと、この世に「絶対」はどこにもないこと、危機管理、マニュアルの準備、やるべきことの順序を守ること、日頃からの訓練、平時からの備え、ルールの徹底、根拠のない楽観主義の怖さです。信頼できるリーダー、統一された指揮系統ももちろん必要です。

 

これからも未曾有の自然災害や未知のウイルスが我々を襲う可能性はあるでしょう。喉元過ぎれば熱さ忘れるのは誰しも同じだと思いますが、直近の事象についても風化させず、あらゆる側面から検証して学び続けることが必要だと痛感しました。そしてたった今も陰ながら命懸けでこの国を守ってくれている人たちがいることを忘れてはいけないと改めて思います。(H.S)

 

映画予告編

世界のドキュメンタリー 「輪廻の少年」

2020年03月15日

映画

NHK BSとEテレで何度か放送され、とても心に残ったドキュメンタリー映画の紹介をしたいと思います。韓国のプロダクションが制作した「輪廻の少年」(2017)は、インド北部ラダック地方で、高僧の生まれ変わりとされる少年と身の回りの世話をする老僧のつつましい暮らし、そして二人がチベットを目指す旅を描いた映像美あふれる作品で、2017年バンフ山岳映画祭をはじめ、いくつもの映画祭で賞を受けました。

 

パドマ・アンドゥ少年はチベット仏教のリンポチェ(転生した高僧)とされる存在ではあるものの、中国のチベット政策のため前世を過ごしたという寺院との接触ができません。それでも世話役の僧侶ウルカイン・リグシンの強い勧めで、遠く離れたチベットを目指し、二か月以上にも及ぶ過酷で長い旅に出るのでした。

 

少年は前世でのチベット寺院の絵を詳細に描きます。チベット仏教圏に限らず、世界各地に前世を記憶していた子どもがいるという話を聞きますが、成長するとその記憶は薄れて無くなってしまうようです。

 

ところで、輪廻転生について、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所公式サイトにはこう書かれていました。
***
チベット仏教の教えによれば、すべての生きとし生けるものは輪廻転生すると考えられている。輪廻転生とは、一時的に肉体は滅びても、魂は滅びることなく永遠に継続することである。我々のような一般人は、今度死んだら次も今と同じように人間に生まれ変わるとは限らない。我々が行ってきた行為の良し悪しによって、六道輪廻(神・人間・非神・地獄・餓鬼・畜生)のいずれかの世界に生まれ変わらなければならないのである。例えば現在、人間に生まれていても、次の生は昆虫・動物・鳥などの形に生まれ変わるかもしれない。しかし、悟りを開いた一部の菩薩は、次も人間に生まれ変わり、すべての生きとし生けるものの為に働き続けると信じられている。ダライ・ラマ法王もその一人である。ダライ・ラマ法王は観音菩薩の化身であり、チベットの人々を救済するために生まれ変わったとチベットの人々は信じている。
***

 

アンドゥ少年の純粋で汚れのない、しかもしっかりとした言動には胸を打たれます。また、世話役リグシンの献身的な無償の愛にも、言葉にできない尊いものを感じました。最後の二人の別れの場面は涙なしでは見られなかったです。あの二人がいつか再会できることを願わずにはいられません。(H.S)

 


パドマ・アンドゥ少年
(画像はNHKオンラインより)

 

【映画予告編】

映画「パラサイト 半地下の家族」鑑賞

2020年02月24日

映画

アジア映画として初のアカデミー賞作品賞を受賞した映画 「パラサイト 半地下の家族」を見てきました。

 

 

ポン・ジュノ監督の映画は何本も見ているのですが、今作は特に監督によるオリジナル脚本に驚かされました。これは誰にも書けないですね。そして2時間ちょっとの映画の中に、これほどの要素を無理なく盛り込めるとは、映画としての可能性を広げてくれた作品だと思います。

 

極悪人は出てこないし、家族愛や救いがあるところがエンタテインメントとしても素晴らしく、パルムドールとアカデミー賞をダブルで受賞するにふさわしい作品でした。

 

さて今回は韓国映画ということで、私が個人的に好きな韓国映画を10本、勝手に挙げてみました。(順不同)

 

・パイラン 
・八月のクリスマス
・マイ・ブラザー
・殺人の追憶
・私の頭の中の消しゴム
・王になった男
・息もできない
・ラブストーリー
・ブラザーフッド
・アジョシ 

 

ここ数年は韓国映画をほとんど見ていないので情報が古いですが、ポン・ジュノ監督の「殺人の追憶」(2004)も入っています。この映画を初めて見た時の衝撃は忘れられません。映画のモデルになった事件の犯人が昨年ようやく特定されたとか。それと「殺人の追憶」と「パラサイト 半地下の家族」には、ある共通の果物が出てくるのが気になっています。(H.S)

映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯」鑑賞

2020年02月01日

映画

 

2017年に公開され、大きな反響を呼んだ映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」。その生涯をさらに深く、そして沖縄戦後史の激動を描いたドキュメンタリー映画 「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 カメジロー 不屈の生涯」を見てきました。

 

アメリカ占領下の沖縄で米軍に挑んだカメジローこと瀬長亀次郎は、230冊を超える日記を詳細に書き残していました。その日記を丹念に読み解き、改めてカメジローの生涯と、戦後の沖縄で起きた、教公二法阻止闘争、コザ騒動、毒ガス兵器移送などをこの映画では精緻に迫っていきます。

 

映画のクライマックスはやはり、国会での当時の佐藤首相との論戦です。決して感情的にならず、時にユーモアを交え、めりはりのあるカメジローの追求には一切のぶれがなく、強い信念が伝わってきます。また、当時の沖縄での最高責任者である高等弁務官を務めたキャラウェイ中将(沖縄の自治権を「神話だ」と評した)の証言や、米軍が秘密裏に備蓄していた、全沖縄県民が致死するほどの量のVXやサリンの毒ガス兵器移送のことなどは、この映画を見なければ詳細には知りえなかったと思います。

 

元NHKアナウンサー山根基世さんのナレーション、役所広司さんの語り、坂本龍一さんによる音楽も素晴らしかったです。(H.S)

 


上映されたメトロ劇場 にあった、この映画の監督 佐古忠彦さんの色紙

 


映画の感想を自由に書けるシネマノート
このノートを読んでみると福井に数多くの映画ファンがいることが分かるし、マイナーな作品でもその良さを伝えようとする熱い思いを感じます。そして、このメトロ劇場の雰囲気もずっと変わらないで欲しいと心から思いました。

 

【映画予告編】

映画「フォードvsフェラーリ」鑑賞

2020年01月19日

映画


 

「フォードvsフェラーリ」 を見てきました。この映画は、1966年に実際にあった、フォードとフェラーリのル・マン24時間耐久レースでの対決がクライマックスとして描かれています。しかし何と言っても、マット・デイモンとクリスチャン・ベイル演じる、人間としても素晴らしい二人、シェルビーとマイルズの信頼関係がかっこいいです。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、レース終盤のマイルズの決断には号泣必至!

 

極限のスピードに達するとき、「車の重さは消え、肉体だけが残る。お前は誰なんだ」というシェルビーの独白と共に映し出されるレース中のマイルズの横顔。その境地は彼らだけが知り得る世界なのでしょう。その実存的な問いにふと、24時間耐久レースは千日回峰行に似ている気がしました。そしてレーサーは、あたかも満行して悟りを得た僧侶のようにも見えるのです。

 

ル・マンの過酷なコースを再現するため、何ヶ月も似た場所を探して当時と同じ巨大なコースと観客席を一から作ったそうです。レーシングカーにもカメラを搭載し、俳優の撮影もレースと同じスピードで行ったというのですから、そのリアリティたるや恐るべしです。

 

映画には、日本でも大ベストセラーになった「アイアコッカーわが闘魂の経営」(1984年出版)の著者として知られるフォード元社長のリー・アイアコッカも登場します。実際のアイアコッカは、昨年7月、映画が公開される4か月前に94歳で亡くなりました。

 

レーサー対決の映画と言えば、ハント対ラウダ(昨年死去)を描いた「ラッシュ/プライドと友情」(2013)もとても良かったですね。(H.S)

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