水上勉『越前竹人形』の世界
2017年03月14日
昨年の終わり、福井県坂井市丸岡町にある「越前竹人形の里」 に取材で伺いました。
越前竹人形と言えば、やはり水上勉の小説が連想されますね。
私もこの機会に初めて読んでみました。
「枝垂桜」師田黎明(1936 – 2010)作「越前竹人形の里」HPより
小説の舞台は現在の南越前町。しかし全編、京言葉に近い若狭の方言で綴られています。
ひょっとすると今の校閲では問題になったかもしれませんが、作品の持つ幽玄ともいえる世界にとても合っていました。
小説の主人公、喜助は母の愛を知りません。そして竹細工の名人だった父が亡くなると、
父に世話になったという、あわら温泉の娼妓で玉枝という美しい女が訪ねてきます。
その後、ある事態が起こってしまった後の玉枝の動揺ぶりがあまりにリアルで、
水上勉自身にまるで玉枝が乗り移ったかのごとく、その心情を描いているのに驚きました。
大切な人を傷付けられないからこそ、考えに考え抜いて、そしていざ結論を出したら後は動くだけ
という、女性ならではと思われる特質を水上勉は見事に描き切っています。
あるいは、女性はどうしても弱い立場であり、理不尽さに泣くのは女性なのだよと
暗に諭しているようにも思えました。
谷崎潤一郎は水上勉の『越前竹人形』をこう評しています。
― 何か古典を読んだような後味が残る。筋に少しの無理がなく自然に運ばれているのもいい。玉枝を
竹の精に喩えてあるせいか、何の関係もない竹取物語の世界までが連想に浮かんでくるのである。―
ところで、文学座では昨年10月~11月にかけてこの『越前竹人形』を上演しました。
公演中、ロビーでは羽二重餅などの県産品や竹人形も販売され、完売だったそうです。
いつか福井でも上演して欲しいですね。
文学座公演詳細ページ『越前竹人形』
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ここからは劇団員さんが福井へ旅した時のブログも読めます。
おおい町にある水上勉が設立した「若州一滴文庫」をはるばる訪ねたり、「金津創作の森」 では公演用の竹人形を製作した山田信雄さんのアトリエも訪ねています。ここまでリサーチして役作りの参考に
しているんですね。水上先生って幸せ者です!(H.S)
こちらは「越前竹人形の里」で福井在住の外国人二人が竹人形作りを体験する動画です。(by GEN)