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映画「ハクソー・リッジ」鑑賞 

2017年07月30日

映画

メル・ギブソン監督の「ハクソー・リッジ」を観てきました。
タイトルの「ハクソー・リッジ」とは、のこぎりで切ったかのような断崖という意味で、
第二次世界大戦で最も激戦地だった沖縄県浦添城跡の一角にある前田高地のことです。
米軍をして「ありったけの地獄を集めた」と言わしめたほど凄惨な戦地となりました。

 

この映画の主人公は、実在した米軍の衛生兵デズモンド・ドス伍長。
映画は戦闘シーンを非常にリアルに描いていますが、もう一つの大きなテーマが信仰です。
映画の中で、聖書からの「殺人は最も重い罪である」という場面があります。
重い罪だから殺人はいけないことなんだというくだりには、ちょっと違和感を覚えましたが(これは
日本語字幕の訳し方のせいかもしれません)、ドスは「自分も国のために戦う。でも僕は人を殺すのではなく助けたい」という信念を貫きます。

 

また、軍に志願したきっかけは日本軍による真珠湾攻撃だったとも言っています。このシーンを見て、アメリカ国民にとって真珠湾攻撃がどれほどショッキングだったのかを改めて思い知らされました。

 

映画の中での戦争は当然ながら、あくまでも米軍目線。米戦艦からの絶え間ない艦砲射撃や火炎放射に怯える沖縄の住民たちについてはまったく触れられていません。「やつらは死を怖れない」と米軍を
おののかせた日本兵たちもとにかく不気味な存在でしかありませんでした。そしてやはり欧米的に
「ハラキリ」は外せないのか、牛島司令官を思わせる自決シーンでは唯一、日本兵がアップで描かれていました。

 

浦添市史によると、当時の浦添村では人口9,217人のうち約45%が死亡。前田地域だけでも549人が
犠牲となりました。この映画の公開に合わせて浦添市では関連したイベントが企画されています。また浦添城跡周辺を案内するNPOのガイドの一人によると、映画公開以来、ガイド利用者が増え、一日100人を超える日もあるとか。観光客も多く、米軍関係者もいるそうです。

 

映画終盤、何度も退却を余儀なくされた米軍が再び気勢を上げ、「よし、行くぞ!」と前田高地を
突進する場面は戦争の大義なき侵攻を目のあたりにしたようで「一体何のためにまだ進むのか。その先に何があるというのか。夥しい数の死者を生み出すことが正義とでも?」と私はやり切れない憤りに
駆られました。

 

2006年に87歳で亡くなったデズモンド・ドスは戦後二度、沖縄を訪れており、取材にも応じています。また、日本兵の傷の手当もしたというドスのために、彼の記念碑を建てようと沖縄では募金活動が始まったそうです。完成の暁には、「命(ぬち)どぅ宝」(命こそ宝)という言葉が今も受け継がれている沖縄で、平和を象徴する新たなモニュメントとなることでしょう。(H.S)

 


「ハクソー・リッジ」公式サイトより 

 


6月18日に開催された「前田高地の戦跡めぐり」から(浦添市HPより)

 

グーグルマップを見ると前田高地に「デズモンド・ドス・ポイント」という表示が出ます。