生誕100年 水上 勉展 ~生きるということ~
2019年09月19日
福井県立図書館内にある福井県ふるさと文学館で開催中の「生誕100年 水上勉展」に行ってきました。水上勉さん(1919-2004) は、福井県おおい町生まれの作家で、代表作には直木賞を受賞した『雁の寺』や、『飢餓海峡』『越前竹人形』『はなれ瞽女おりん』などがあります。
会場内の大きなパネルになった水上さんが雪の中、コート姿で佇む写真のダンディさにはそこいらの俳優も敵いません。 また、壁面いっぱいに並べられた水上さんの本はどれも味のある装丁で壮観です。中でも特に、白地に淡い紅色でタイトルだけが大きく書かれた『五番町夕霧楼』の表紙は印象的でした。
直筆の原稿も多く展示されていて、その何とも柔らかな、やさしい字に水上さんの人柄が偲ばれます。やはり赤入れや直しはかなり多く、最終稿を仕上げるまでの大変さを目の当たりにしました。
また、あるエッセイからの一文には心揺さぶられました。
―私は、子供時代を振り返って、何一つの教訓などたれなかった貧乏な父と母のことを思い、二人はいま千篇の書にまさる言葉をいっぱい残して死んだことに気づいている。―
こんな水上さんだから、『ブンナよ、木からおりてこい』みたいな小説も書けたのですね。
この展示会は観覧無料で、貴重な映像や講演音声もあり、水上先生の集大成を見ることができる贅沢な空間です。一日ここにいられるくらいでした。(H.S)