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マーク・ピーターセン著『日本人の英語』

2019年11月14日

この本は、英語学習者にとっては必読書ともいえる一冊だと思います。このウェブサイトGEN は英語でも発信しているので、私もまだまだ英語学習者です。初版が1988年の本ですが、一度は理解したつもりでもそのうち忘れてしまうので、時々読み返してしっかりと意識に刷り込みたい内容です。著者のマーク・ピーターセン氏は、1980年に留学生として来日して以来、日本文学を研究。現在は大学教授として英米文学・比較文学を教えています。

 

 

最初に読んだ時の冠詞についてのくだりは衝撃的でした。なぜなら初めてその概念をリアルに実感できたからです。本文から一部抜粋したいと思います。

 

【 a は名詞につくアクセサリーではない】
―冠詞のない言語である日本語と、冠詞が論理的プロセスの根幹である英語の違い―
"Once upon a time, there were an old man and an old woman. The old man…"
―(むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは…)
日本語では最初に「むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさん[は]いました」とは言えないのと同じように、英語で "Once upon a time, there were [the] old man and [the] old woman…" とは言えない。が、日本語の場合、一度そのおじいさんが「あるところにいたおじいさん」として紹介されたなら、その次のセンテンスから「おじいさん[は]」という表現は少しもおかしくない。それと同じように、英語の場合も一度そのold manが an old man who was として紹介されたら、語り手と聞き手の間の相互理解では、彼がthe old man となる。―

 

―英語で話す時も書く時も、先行して意味的カテゴリーを決めるのは名詞ではなく、a の有無である。適切な名詞が選ばれるのはその次だ。もし「つける」という表現をするなら、「a に名詞をつける」としか言いようがない。「名詞に a をつける」という考え方は、実際には英語の世界には存在しないからである。― 

 

そう言えば、英語のネイティブ・スピーカーが、まず a や the を言ってから、ちょっと遅れて次にくる名詞を言う場面をよく見ます。たとえば、I ate a…a…a rice ball. といった具合で、a を繰り返しながら次に言う名詞を思い出しているのですね。

 

ピーターセン氏も書いていますが、日本の英語教育では、こういった冠詞の本質を教えていない気がします(今は分かりませんが)。会話や発音に力を入れるのもけっこうですが、こういった基本的な感覚を身に付けることがまず必要だと切に感じます。(H.S)