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スタッフブログ

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池上永一著 『統ばる島』(すばるしま)

2019年08月29日


―すばる【統ばる】集まって一つになる。(大辞泉より)

 

『統ばる島』は、『テンペスト』などで知られる、沖縄・石垣島育ちの作家、池上永一さんの短編小説集で沖縄・八重山諸島の八つの島がテーマになっています。八つの短編すべてがそれぞれの島の風土を織り込んだ、ウィットに富むストーリーでとても面白いのですが、中でも強烈に印象に残ったのが「西表島」(いりおもてじま)の章です。

 

西表島には三回ほど行ったことがあり、その章で描かれている太古を思わせる自然、山のむせかえるほどの草いきれや湿度にいたるまで、あまりにリアルだったので自分がまた島にいるかのように感じるほどでした。そして想像を超える展開、雌雄としての原始的本能の描写は衝撃的です。

 

以下は、章の冒頭と終わりからの引用です。
―八重山諸島の屋根と呼ばれる西表島は、南海の秘境だ。八重山諸島のなかでももっとも巨大で人を寄せつけない。高峻な山肌は常に雲のヴェールを纏い、その全貌を見ることは不可能である。西表島より高い山脈は世界中至るところにあるが、この島の山の特徴は高さではなく深さにある。今入口で見上げているのは氷山の一角で、一歩足を踏み入れればコンパスも役に立たない熱帯雨林になる。―

 

―船から山の装備をした若者がどやどやと下りてきた。到着したばかりの彼らに定年間近と思われる男が近づいてきた。「私は島の研究所で技師をしている古見と申します。もしかして山で野営を予定していませんか?」
山は原罪を覆い隠し今日も生い茂る。―
(H.S) 

 


浦内川のマングローブ林と砂浜
とても日本とは思えない自然が目の前に広がります

 

カンピレーの滝をめざしてジャングルをトレッキングすると
道が沢になっている箇所がいくつもありました

 


約一時間後、ようやくカンピレーの滝に到着
カンピレーとは「神の座」という意味
高低差はあまりない滝なのですが、何とも言えない神々しさです

6年前に刊行された本との新鮮な出会い―アノスミア わたしが嗅覚を失ってからとり戻すまでの物語

2019年07月26日

 

シェフを目指していた若い女性が嗅覚を失って、それから取り戻すまでの物語です。本はできるだけ電子書籍で読むことにしているのですが、この本については電子版が無かったので図書館で借りることにしました。

 

で昨日、福井県立図書館でこの本を借りたところ驚いたことに、中ほどに丸く折られたスピンが挟み込まれたままで、本が開かれた形跡が全く無いんです。もしかして僕が最初の読者?刊行は2013年9月ですから6年間近く、大勢が利用する図書館のこの書架で手に取られるのを待っていたんだろうか。

 

といってもここに所蔵されたのが6年前とは限りませんから、まぁ大した意味はないんですけどね、最初からちょっと楽しい出会いになりました。

 

不思議な題名のこの本を読もうと思ったのは、実業家で読書家の出口治明さんが著書(ビジネスに効く最強の「読書」)の中で紹介しているからです。出口さんの「人間は、人に会い、本を読み、世界を旅すること以外に賢くなる方法はありません。」という言葉が僕は好きなんです。

 

その出口さんが《「花には香り、本には毒を」あるいは「偏見なき思想は香りなき花束である」。本についての箴言では、この二つがたまらなく好きです。》と書いている部分で「そういえば…」と紹介しているのがこの「アノスミア」なので、まだ読み始めたところでどういう展開になるのか全然わかりませんが、どんな毒、あるいは香りがあるのか、興味津津です。
T.S

第160回 直木賞受賞 『宝島』 真藤順丈著

2019年06月20日


『宝島』は、担当した編集者が「手がけた本の中でこの原稿が自己ベスト」「編集者生命を懸けて推します」と熱く断言した力作です。著者の真藤さん自身、スティーブンソンの同名小説にも引けは取らない自信がある、と言っています。

 

この作品では、戦後の沖縄を舞台に三人の少年少女が成長していく様子が、実在した人物や実際に起きた事件などと共に描かれていきます。瀬長亀次郎が登場した時には思わず喝采を送りましたが、宮森小学校米軍ジェット機墜落事件の場面では、あまりのむごさと理不尽さに胸がえぐられるようでした。

 

全編通して、とびきり熱くて濃くて力強くて、極上の冒険&ミステリー映画を見ているように感じる小説です。真藤さん、実は映画監督を志していたらしいので思わず納得でした。私は毎日少しずつ読んでいたのですが、日々読み進める楽しさが半端なく、続きをどんどん読みたい、でもそれも何だかもったいない気がして、少しでも長く浸っていたい、終わってしまったら寂しすぎる、と思う圧倒的作品でした。

 

文中の言葉の多くにウチナーグチ(沖縄の言葉)でのルビが丁寧にふられており、ウチナーンチュ(沖縄の人)でもない東京生まれの真藤さんがその労力を惜しまなかったことにも感服しました。そして、かっこで書かれたちょっとした補足がいつも面白くて思わずクスリとしてしまう、そんな真藤さんの笑いのセンスも好きです。たとえば―薄れる意識(と、パンツのゴム)をどうにか支えてグスクは建物の脱出を試みた。―(本文より抜粋)

 

ところで『宝島』というタイトルですが、沖縄には「命どぅ宝」(ぬちどぅたから=命こそ宝)という有名な言葉があり、真藤さんも意識していたのでは?と思うので、ある意味「命の島」とも解釈できるかもしれません。

 

来る6月23日は沖縄慰霊の日(1945年の沖縄戦で組織的戦闘が終わったとされる日)。今年はちょうど日曜にあたりますが、この日は毎年沖縄県では正式な休日となり、県、市町村の機関や学校がすべて休みになります。この機会に改めて沖縄の現状や犠牲になった多くの命に思いを寄せてみたいと思います。(H.S)

 


著者 直筆メッセージ
「戦果アギヤー」とは、戦後ウチナーンチュが米軍基地からさまざまな物資を盗むことで生き延びていた、その「戦果をあげた者」という意味

『禅、シンプル生活のすすめ』枡野俊明著 

2019年04月25日

今日は、いつも手元に置いて繰り返し読んでいる本の紹介をしたいと思います。著者の枡野俊明(ますのしゅんみょう)さんは曹洞宗徳雄山建功寺の住職でありながら、日本を代表する庭園デザイナーです。

 

枡野さんが禅僧でありながら、なぜ庭のデザインを手掛けるようになったかというと、かつて禅僧は修行を通して会得した心を何かに置き換えようとした、その一つが庭だったからです。たとえば、平面が好きな人は墨絵を描きました。

 

「庭は自然の素材を使っているから、どんどん変化していく、それが禅で言う無常。無常とはとどまっていないということ。この世の森羅万象すべてが少しずつ変化していくし、変化していくことが、私たちの命であり、一生。それを変えたくない、とどめたいと思うから、そこに悩みが生まれて苦しみになるんです。変化をそのまま受け入れると、悩みや苦しみだと思っていたことが、そうでは無くなる。それに気付く場所が庭なんです。そして変化していくことに美しさを見出そうとしたのが日本人なのでしょう」と枡野さんは言います。

 

さて、本の中から一部抜粋してみると…
◆いらないものを捨てる
― 私たちは、物事がうまくいかないとき、「何かが足りない」と思ってしまいがちです。でも、今の状況を変えたいなら、何かを「得る」よりもまず「手放す」ことが先。執着を捨てる。思い込みを捨てる。持ち物を減らす。シンプルに生きるとは、心や体の荷物を捨てることでもあります。手放す・捨てるという行為は、なかなか難しいものです。人との別れがつらいように、ときに痛みをともなうこともあるでしょう。でも、物事の流れをよくし、軽やかに生きたいのであれば、まずは手放すことから始めてください。手放した瞬間、新たに入ってくるのは「豊かさ」です。―

 

捨てると豊かになるというのは矛盾しているようですが、物がないと不安だった今までの自分から一つ上のステージに上がったという自信がついて、心に強さと余裕が生まれるということかもしれません。私も今度の連休には、ふだんできない片付けや掃除をしたいと思います。(H.S)

 


枡野さんが設計したホテルの庭園をラウンジから望む
(写真はセルリアンタワー東急ホテル公式HPより)

 


夜の雰囲気も素敵です
(写真は同上)

 


福井県越前市のネコ寺として知られる御誕生寺の庭園も枡野さんによるもの
(写真は枡野俊明 + 日本造園設計のHPより)

 


開いたページに「答え」があるかも…

福商JETS五十嵐先生から教えてもらった本「チームの心をひとつにする技術」

2018年11月29日


練習場で見せてもらった本。左下の手は五十嵐先生

 

先日福井商業JETSの練習場所におじゃました時、顧問の五十嵐先生からこの村田祐造著「チームの心を一つにする技術」を薦められました。本を読むだけではなく先生とJETSは著者によるワークショップにも参加してチームワークを磨いているそうです。
五十嵐先生と言えば傍から見るとすでに常勝チームの指導者として十分な実績を上げていて、むしろご自身がチームワークの本を書けるんじゃないかとも思えるんですが。
その努力の一端を垣間見て感動し帰宅後すぐ注文した本が、家に届きました。
T.S

 


壁に貼ってあった「チームワークピラミッド」の図

 

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